三島芳治さんの著作で、今のところ全部で三巻。
上のリンクから試し読みをしてみてほしい。
シンプル
たいていのページは、3,4コマくらいしかなく、とても空白が多い。
それがこの作品の清潔感、特別感を作っていると思う。
「バタッ」とか「ガシャン」の効果音が一切使われていない。
しかし、内容が単純ということはなくて、静的な絵の連続で物語を作るための補完を読者がすることになる。
例えば、一巻の11ページ。わずか2コマしかない。
児玉さんは 一秒間に五回 猫をたとえた
猫は逃げた
ここで読者が受け取るのは、猫がどう逃げたか、なぜ逃げたか、などではなくて、「時間の経過」ではないかと思う。
五つの喩えのリアクションとして猫が逃げることでフリとオチがマッチングして、時間が経つ。そのような構造がこの作品内では多々あるように思う。
絵がすっごい良い
言わずもがななので、見て確かめてほしい。
自分の頭の中をこんな抽象的な雰囲気で満たせたら最高だなと思うし、この本を読むことで近いことをできるので価値が高い。
文学要素
文学がテーマになっているこの作品だが、「確かな現実があり、その後で言葉がある」のではなく、「言葉によって現実が形作られる」という哲学チックな世界観ががっつり採用されている。
主人公(=笛田君)の見ている世界が確かでないことはたびたび示唆されるし、児玉さんの存在や姿もその例外ではない。という構図で進んでいくので、ふわふわした感触がある。
フィクションの中で言葉が世界を変えうるという面白さを超えて、実際にそのようなことは起こっているよね。と実感できるくらいの緻密さ、儚さがあるので、目が離せない。
↑哲学の部分について触れていた人の考察noteのリンクを載せておきます。
キャラクター
だから 今日は 笛田君と レゴで遊びます
このまま二人で 人間の作った言葉を すべて言い終われば
僕たちは この世界の 全ての会話をしたのと同じことになるのでは ないだろうか
文脈次第では浮きそうな発言や思考でも溶け込むような、幅の広い登場人物が多いと思う。
特に、笛田君の能天気キャラと繊細さの両立がものすごいバランスの上で成り立っていると思った。
一巻55ページの、児玉さんが耳をふさぐ絵が大好きです。